あらゆるものをセクハラ化!市原えつこさんに聞いた作品と未来のお話

今回インタビューさせていただいたのはSI(セクハラインターフェイス)で有名な市原えつこさん。彼女は日本の奇妙な文化にテクノロジーを掛け合わせてデフォルメする活動を行う。日々進化するテクノロジーとメディア環境の中で彼女の創作活動を伺った。

※こちらの記事は2015年4月に取材した記事です。

DSC_4583写真:市原えつこさん

 

視覚体験と触覚体験でフィードバックする

――まずSR×SIが第18回文化庁メディア芸術祭エンタテインメント部門 審査委員会推薦作品に選ばれました。こちらの経緯と作品(SR×SI)の概要について教えてください
市原:まずSR×SIの概要なんですが、脳科学者の藤井直敬先生が率いるSR Laboratoriesが開発したSRシステム(Substitutional Reality System:代替現実システム)という技術を用いて制作しています。SRとは

現在目の前で起きているライブ映像と過去に予め撮影した映像を差し替えながらHMD内で投影することで、体験者の目の前で起こっている出来事が現実なのか虚構なのか判別不可能にすることができる恐るべきシステム。

出典:https://media.dmm-make.com/

こういった形のヘッドマウントディスプレイで、デザインも山中俊二(リンク)さんという著名なインダストリアルデザイナーの方が設計された代物です。

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このディスプレイの中では目の前にいない人をいるように感じてしまったりします。過去に録画しておいた映像を目の前に起きてる事とこっそりスイッチングできてしまうので、どこからが現実の映像でどこからが過去の映像なのか区別がつかなくなるというものです。

SRの中で起きていることは基本的に「視覚体験」なんですけど、一方で大根を触るSI(セクハラインターフェイス)は「触覚体験」を「聴覚」でフィードバックするものなんです。SRとSIが組み合わさる事により、共感覚的な全く新しい体験が得られるんじゃないかということで試験的に制作を始めました。

妄想と現実を代替えするシステムSR×SI

興奮度合いに応じて、仮想の美女の行動がエスカレートしていく

市原:女優の藤崎ルキノさんをモデルに迎え撮影しました。

堀江さん(ホリエモン)にも体験して頂きました!
中の映像は凄いんですけど、現実の世界で実際に触ってるのは大根なんですよ(笑)ディスプレイの中のユートピア感と周囲からみた間抜けさのギャップを楽しんでます。これは心拍センサーを手につけていて、心拍がどきどきすると、それに連動して中の女性も「ドキドキしてきちゃいました」と言う仕掛けになってます。

去年、SR×SIの体験会を行い興奮度5段階評価でアンケートとったんですけど、だいたい4~5と高評価でした。みなさん「わー!」とか言いながら興奮してましたし、外から見るとすごかったですね。

――文化庁メディア芸術祭に出品しようとおもった経緯は?
市原:SR×SIを 2013年に制作した時に、やばい代物ができたのはわかっていたので、色んなコンペに出し反応をみたほうがいいフェーズだなと個人的には思っていました。SR×SIは作品として、GIZMODEさんをはじめとした各媒体で取り上げられていただいたりはしたのですが、2013年の間は賞としては日の目は浴びなかったんです。最後の最後でだめになっちゃうことが多くて。半ば諦め気味だったのですが、翌2014年に文化庁メディア芸術祭にふと出品してみたら、なぜか審査委員会推薦作品に選ばれたんです (笑) よりによって文化庁じゃないですか!?だから、「本当に?!」ていう感じだったんですけど。正直うれしかったです!

最近気づいたのは、創設したばかりのコンペだと初めに受賞した作品がそのコンペの色を決めてしまうじゃないですか。だからSR×SIのような、直接的にエロく見える作品を採用するのはやはりリスクがあり難しかったんだと思います。文化庁メディア芸術祭や学生CGコンテストとか、開催年度も長く歴史がある賞ほど、スパイスや変化球が欲しいのか何かで、きわどい表現を含んだ作品も受け入れてくれるのかもしれないなって感じました。

――私は去年、アーホ!で市原さんを知ったのですが(作品が衝撃的でした)2014年はどのような年でした?具体的な活動などあれば教えてください
市原:2012年くらいから作家活動を始めて、作品が色々な媒体でバズったりしたのが2012年~2013年初めくらいでした。
なので2013年は「ネタとして消費されないように、アーティストとしてのキャリアを積み重ねないと」と結構気張っていていたんです。「テクノロジーでエロの人」っていうイメージが付いていたこともあり、それを意識して近い界隈でしか動いてませんでした。ただ、分野を限定してしまうと自分の中の好奇心がしぼんできちゃっていて、その反動で2014年は活動範囲を限定せずに、やりたい事をやってみようと決めました!

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振り返ってみた2014年

写真で雑に振り返ってみた2014年
2014年活動まとめ

市原2014年を一言でまとめると「旅」ですね!振り返ると2014年、色々やってましたね。旅といっても、土地的な旅もそうですし、今までスルーしていた色んなものに興味を持ったりしました。例えばヒップホップに興味を持ったりとか..色んな意味で旅でした。

 

「写真で雑に振り返ってみた2014年」はかなりお腹いっぱいになりますので必見です。

 

企画フェーズの楽しさに気付いた

――アーティスト活動をはじめられたきっかけを教えてください
市原:今もアーティストと言い切れないところがあるんですけど、元々絵を描くのが好きで、高校の時も美大に行こうとして、予備校に通ってました。でも、課題をこなす中で自分は職人気質じゃないという事に気づいて、むしろその前の企画のフェーズが楽しいから、これだったら美大に行く必要ないかなと思って文系の大学に進学しました。でも物を創る事への執着は消えなかったので独学で映像をやったり、グラフィックデザインをしたりしてました。そんな時にたまたま、大学にメディアアーティストの先生が臨時で来られて、そのゼミが自分のやりたい表現に近いかなと思って入ったのがきっかけです。

 

セクハラインターフェイスの発想

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写真:初期セクハラ・インターフェースのスケッチ

市原:ゼミをやっていく中で、テクノロジーを利用して何か作品をつくってみようというプロジェクト課題があって、元々日本のエロとテクノロジーを組み合わせて何かやりたいなと思っていたので、ふとセクハラインターフェイスの発想が出てきたんですよ。

その時に今セクハラインターフェイスを一緒にやっている、渡井大己さんがゼミにモグっていて、一緒に作品をつくりはじめました。初期段階のプロトタイプではありますが、色んなところで展示させていただきました。ですが、私が大学を卒業して社会人になったことで、1度休止期間がありました。その後、大学のときに知り合ったAR3兄弟の川田十夢さんのトークショーに行った時に「AR忘年会」に誘っていただけたんですよ。そこで登壇することになったんです。

 

復活したセクハラインターフェイス

市原:何も新しく創る時間がなかったから昔創ったセクハラインターフェイスをもう一回やろうと思って、もう一度渡井さんに声をかけて、人前に見せるものだからデザインやシステム面を修正して、現在のSIの形ができあがったんです。

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写真:現在のセクハラインターフェイス

それがきっかけになって社会人をやりながら作品制作をはじめました。
しばらくは趣味程度でやっていたんですが、社会人2年目の夏くらいに、東京都現代美術館で若手アーティスト向けのプランをプレゼンするコンテストがあって、それが準グランプリを受賞したんですよ。ちょど会社の仕事にも行き詰まりを感じていたこともあり、作家としてやっていくのもありかもしれないと思い活動を始めました。

それからありがたいことに様々な方に見ていただいたり、ニコニコ学会βや新しい場所で展示する機会に恵まれました。どこで火がついたのかはわかないですが、何かのきっかけでセクハラインターフェイスがバズったことがあって、そこからアーティストとしての活動が多くなりましたね。

――仕事をしながらだとアーティスト活動の時間って確保したり、制作する事も難しいとおもうんですが、そのモチベーションはどこから?
市原:やっぱり楽しいからですね。元気がでる!!仕事で制作してるものは、既にある程度方向性が決まってるものも多くて、世の中の大多数の人が便利だ!と思うものをめざしてものを作ることが多いんですけど、アーティストとしての作品制作は全然違う尺度で、妄想先行で作りたいと思ったものを作れる!あと、会社の中だけで活動してると仕事で行き詰まったら、精神的にまいっちゃうかもしれないですけど、もし行き詰まっても私にはアーティスト活動があるからみたいな感じで、うまいこと心の支えになってます(笑)
漫画家のしりあがり寿さんも同じように二足のわらじで活動されていて、サラリーマンをやりながら漫画を描いて..しりあがりさんの著書を読んだ時には、すごく共感し励まされました。

――作品について教えてください
セクハラインターフェイスについて(なぜ大根?)
市原:最初は喘ぐテルミンという形でつくって、直接的なデザインだったんですよ。(ストッキングの局部にセンサーを取り付けて)でも表現があまりに直接的過ぎて、Make:Tokyo Meetingで展示NGになったんです。その後に代替え品を色々探した結果、「花」にしたんです。人工物にはない、艶かしさがあるなと思って、すごく良かった。でも今度は耐久性がなかったんです。

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写真:触ると喘ぐ当時のお花たち

それから、どうしたものかと考えた結果、「大根」を発見したんです!大根ってメタファーとしても生脚っぽいし、元々日本の農村で夜這い文化があるんですけど、夜這いOKか否かの確認をとるときに、野菜をわたしてOKかどうか確認する風習があったらしくて。
野菜って昔から日本人にとって性的な物の見立てとして使われていたんだということに気づいて、色んな意味で自分の作品のモチーフに合うなと思って大根にしようと決めました。それからずっと大根一筋ですね。

ひろしについて
――なぜ名前がひろしなんですか?
市原:名前は完全に直感ですね(笑)元々『ウェアラブルセクハラインターフェイス』という身につけることのできる洋服型セクハラインターフェースを作っていて、そのデバイスのディスプレイの為にマネキンを購入したんです。で、マネキンを買ってみたらそのマネキン自体の魅力と存在感が強すぎて、展示の主役がマネキンになってしまったんです。

――ひろしは普段どこにいるんですか?
市原:私の家にいますよ。初めは立てていたんですけど、2mくらいあり家に置くとかなり圧迫感があったので今は半分に畳んでいます。クリスマスは一緒に過ごしました(笑)この時はちょっとシャンパンを用意してディナーも用意して。
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写真:クリスマス風ひろし

ひろしにはストーリーがあるんですよ

市原:ひろしは元々カリスマのファッションマネキンだったんです。日々色んなトレンディーな服を着ていたんですが、実は抑えきれない欲望を持っていて「服じゃなくて、俺の美しい肉体美を見てくれ」という欲があって。
その欲を持ちながらファッションマネキンとしてカリスマの道を歩んでいたんですけど、「俺は自分に正直になる」って決めて。2013年のシブカル祭では、渋谷パルコの1階のエントランス付近でひろしが上裸でゆっくりと回転していました。威風堂々をBGMに流しながら。ひろしの夢が叶った瞬間を輝かしく応援する装置として「露出支援システムHIROSHI♂」という名前で展示したのが2013年のシブカル祭でした。展示場所が渋谷パルコのエントランスだったので女子高生が指を差しながら「ひろし!ひろし!」と言いいながら通っているのを楽しんでみてました。

せっかくなんで渋谷ハチ公みたいな、都市伝説を作りたいなと思って、「ドリームひろしというハッシュタグをつけてひろしと一緒に写真を撮ると願いがかないます!!」という看板を出していたら、本当にやっている人がいてうれしかったです。どうやらご利益があったカップルもいたみたいです。
2013年にひろしの夢が達成したので、それを世の中にどう還元していくかという事を考えた結果、仏になったというのが2014年のシブカル祭ですね。
ひろしをPRするためにHPを作成したんですが、ドメインが凄いんです..(笑)「hiroshi.sexy」

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写真:2013年シブカル祭のひろし

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写真:2014年シブカル祭のひろし

――最後に、これからの活動の方向性(作品)を教えてください!

あらゆるものをセクハラ化

市原:最近やらせていただいたのはSONYさんの若手の技術チームが開発した「MESH」というデバイスがあるのですが
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出典:www.indiegogo.com
MESHとは?

実際にやってみて気付いたのですが、MESHとセクハラインターフェイスは相性が最高に良かったんです!MESHは思いついたそばから試せるので即興性が高いんですよね。普通だったら何か作りたいと思ったら設計から考えてなんですけど、MESHを使えばアイデアを思いついたそばから実現できるから、どんどん妄想が浮かんでくるんですよ。これを作った方々と仲良くなれたので、あらゆるものをセクハラ化できるんじゃないかと興奮しています。

 

日本のねっとりとした文化を海外に輸出したい

市原:あとは最近秘宝館がどんどんつぶれているじゃないですか。その反対にオリンピックが開催決まってから「クールジャパンだ!」といって、アニメとかアイドルとかポップなサブカルチャーがスポットライトを浴びているんですけど。そうじゃなくて日本に元々ある、男根崇拝の神社とか秘宝館とか、そっちのねっとりとした文化を押し出したいなと思っていて、それにコミットする為に何かやりたいなと思っています。

例えば行政と絡めて、文化政策をやっているところと組んで何かやりたいなとか、日本のねっとりとした文化を海外に輸出したいなというのは、一つの方向性ですね。あとはマスメディアとかチェーン店とか、生活に溶け込んで人の常識を作っているものをハックしたい。マジョリティで当り前なものに対して変なスパイスを入れたいです。

 

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これが俺の道、俺なりの社会貢献
ひろしが見いだした世の中への感謝の仕方。それは、仏へ変化を遂げることだった。一年間の修行の末、ついにめでたく仏へ。ひろしは己の道をついに発見したのだった。

引用:hiroshi.sexy

 

Artist
市原 えつこ
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1988年、愛知県生まれ。早稲田大学文化構想学部表象メディア論系卒業。学生時代より、日本特有のカルチャーとテクノロジーを掛け合わせたデバイス、インスタレーション、パフォーマンス作品の制作を行う。主な作品に、大根が艶かしく喘ぐデバイス《セクハラインターフェース》、虚構の美女と触れ合えるシステム《妄想と現実を代替するシステムSRxSI》、脳波で祈祷できる神社《@micoWall》等がある。2014年《妄想と現実を代替するシステムSRxSI》で文化庁メディア芸術祭エンターテインメント部門審査委員会推薦作品に選出。

セクハラインターフェイス
市原えつこ

Interviewer
植田 淳平(通称JP)
MediArt管理人。


2015-04-11 | Posted in Interview1 Comment »