【GABOMI】「その時しかできない作品を撮っていく!」男性トイレで表現したOmotenashi(上)

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「性」と「アート」これ以上に表現で融合できるものはないと思う。

今年の春、青山スパイラルで開催されたSICF15に足を運んだ時のこと、こちらの作品Omotenashiに遭遇した。
制作したのは写真家のGABOMIさん。昨年SICF14で紫牟田伸子賞を受賞した翌年の受賞者展示作品であった。
前半はOmotenashiの作品について、後半はGABOMIさんの他の作品や取り組みについてインタビューさせていただいた。

――GABOMIさんのOmotenashiの作品に衝撃を受けました。あの作品について教えて下さい。
GABOMI:常々「エレガント」というものに対して、仮面みたいだなあと思っていました。とにかく最悪な人でも、何か上品ぽくエレガントに立ちふるまえば社会的にはOKで見過ごされるというか、なんとなく制圧できるというか。本質が何であれ、そういう雰囲気というものに人はのまれてしまうんだと。

だから今回はそれを逆手にとって、男子トイレで下ネタを女性がやるという下品な作品をやってみました。
Omotenashiってタイトルは、実は男子トイレとカフェがとても近かったので、食事と排泄をくっつけてみたんです。オリンピックも意識して、食事と排泄のオモテナシということにしました。ノリですね(笑)

男子トイレに入ってすぐの便器に、下品なウエルカムドリンクを置きました。シャンパングラスに尿を模した液体(安全)とチェリー(ボーイ)を入れ、美しく配置して、尿の排泄後にノドが乾いたらどうぞ!というオモテナシです。実際に飲んでしまった人も居ましたよ!(笑)

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あと個室の中にも、排泄された後にお腹がすいたら是非どうぞ!というわけでフルーツと飲み物も用意しました。
こちらも食べた人がいましたね。手洗い場には、生け花じゃなくて”生けバナナ”を設置して、完熟王の芳醇な香りでオモテナシ。
「うわ!バナナくさっ!」と評判でした。蛇口の両側には生卵をふたつ(たまたま)

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下ネタなのに『上質っぽい雰囲気』

そして忘れてはならない、私は写真家です。写真作品もちゃんと展示しました。「オレンジ肛門」「オレンジ乳首」(セミヌードの自撮り)など、なかなかの傑作です。あと、トイレから出てすぐのカフェにはトイレットペーパーを使ったテーブルセッティング展示もしましたね。

スパイラルさんご協力の元、こんな感じでやりたい放題やらせていただいたのですが、特にクレームも無かったようで、やはり「あり」だったみたいです。青山、スパイラル、オシャレ空間、アート、アーティスト、大理石調のシミ一つない美しい男子トイレetc…

要は、男子トイレのくせに下ネタのくせに『上質っぽい雰囲気』があったわけで、それこそがみなさんのハードルを下げたのだと思います。だからこそ「写真撮りませんか?せっかくなんで、やっちゃってください!」という私の誘いにまんまと皆さん乗ってしまわれたわけです。このトイレ内での撮影がめちゃくちゃ楽しかったんですよ(笑)

――あれは一般の人ですか?
GABOMI:友達やボランティアさんもいましたがほとんどが一般の方です。

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これら人物撮影が何だったのか?については未だにわたしもよく分かってないのですが、たぶん作品の中での記念撮影的なものだったのかなと(笑)すごく盛り上がったんですよ。男子トイレで可愛らしい女性が大胆になっていく姿は見てて快感でしたね。
だけどどれもこれも、いわゆるエロじゃないんですよね。まるで小学生がグラウンドで走るかのようにみんなはしゃいでました。

あと男性トイレは普通に使える状態なので、アート関係なく排泄目的の方ももちろんドンドン利用されてたわけで、気にされない男性は、撮影の横でも普通に用を足してたりしてましたね。全員が鑑賞前提ではないという、ああいう緊張感のある混沌とした感じはすごい好きでした。刺激をもらいました。みなさんすごいです!(笑)

 

自由を表現したかった

――あれは女性トイレでは表現できない?
GABOMI:そうですね。女性トイレではなくて男性トイレで展示することにはこだわっていました。男性エリアを積極的に攻める女性というのは数が少ないので、男性は理解できないまま受け入れてくれるんじゃないか?という計算はありましたが、当初はあまりその動機については深く考えてなかったんです。でも、フィンランドの美術の先生が作品を見に来てくれた時大ウケでこう言ったんです。「あなたはリアルフェミニストですね!」と。私はハッとしました。そんなこと思ったこともなかったからです。でもそれからじっくり考えてみて、確かに、女性の性表現解放っていう意味もあったなあと気づきました。

最近は日本女性が性的表現をする事はそんなに珍しくはないと思いますが、でもまだまだ女性自身の抑止力があると感じています。なんかこう、いわゆる「モテ」ってあるじゃないですか…やっぱり女性も「モテたい」んですよ!メジャーな女性誌はその願望の集大成で、最終的にハイレベルな男性にモテてゴールインして上質ライフ=幸せという構図が見える。

いくら肉食女子とか言っても、服装も髪型も言動も男性ウケは重要です。そんな「女性らしさ」や「カワイイ」から突出してしまうコトをやる女性がいてもいいんじゃないかと思ってます。明るく楽しく前向きに下ネタをやることで、私は自由を表現したかったんだと思います。

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物事の本質を突きたい

――そういう発想はふってくるんですか?
GABOMI:いつも考えてます。心にひっかかった事を捨てずにチーズを熟成させるようにいつも引き出しにしまってます。そして、お風呂とか帰り道とかそういうスキマ時間に、引っ張りだして考えています。また『作品』といかに繋げるかというのも重要ですね。

――今ちなみに何個くらいありますか?
GABOMI:今制作中のプランは3つありますが、考えていることは、人間、自然、農業、森、宇宙などですね。

『人工と天然』って言葉あるじゃないですか。
人工物って考えたら元は全て天然なんですね。石油だって化石燃料で自然から発掘してきたもので、それを素材で加工して、いわゆる料理みたいなものが人工物ですね。例えばこのコップもそう。人工か?天然か?そこに明確な境界線なんて存在するのか疑問です。そして人間は自然を利用しつつ自然の中で生きています。

『自然と人間』と『自然の中の人間』というのでは全然考え方が違ってくる。現在の人間社会では『自然と人間』という考えの方が多いと思います。でも私は、人間は自然の中の一部であり、引いては宇宙の一部なんだという考えの中で、物事の本質を突きたいと考えています。まだまだ模索中です。

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写真家 レイ・ガボミ(REI GABOMI)
1978年生まれ。幼少期を高知県で過ごし香川県へ移住。2008年より独学で写真を開始。
2011年私鉄ことでんの車輌工場を撮影した「ことでん百年目の写真展」(高松天満屋/2011年)が反響を呼び、
一連の写真をメインビジュアルに使用した広告は、2012年全広連鈴木三郎助地域賞優秀賞、
香川広告協会広告賞印刷部門 新聞部門で各優秀賞を受賞した。2012年 写真集「ことでん仏生山工場」を赤々舎より刊行。
高松市立美術館「高松コンテンポラリーアート・アニュアル vol.02」に出展。2013年SICF14 紫牟田伸子賞を受賞。
2013年11月ミャンマーのカレン民族を撮影した写真がH.I.S賞(ミャンマー祭2013 )を受賞。

GABOMIオフィシャルサイト

「その時しかできない作品を撮っていく!」男性トイレで表現したOmotenashi(下)

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2015-01-02 | Posted in InterviewComments Closed