【GABOMI】「その時しかできない作品を撮っていく!」男性トイレで表現するOmotenashi(下)
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【GABOMI】「その時しかできない作品を撮っていく!」男性トイレで表現したOmotenashi(上)
水戸芸術館クリテリオム89
カタチや色を通じて宇宙を表現しているんです
水戸芸術館クリテリオム89での個展で発表された作品「The surface – mirror」の4点。一見、CG画のように見えるが池や川などの水面を撮影した合成なしの写真だ。「性」に関する作品だけでなく風景や人間模様などを撮影した様々な作品を制作している。
――現在の活動状況を教えてください。
GABOMI:現在はクリテリオムで展示しているような水面の写真撮影にはまってます。カタチや色を通じて宇宙を表現しているんです。ドキュメンタリー作品もいくつか制作中で、今は庭師さんの日常と、ミャンマーの友達の日常生活を追いかけています。ドキュメンタリーはひたすら待つ撮影なのでとても時間がかかります。まとまるまでに1-2年はかかりますね。ある程度目処がたったら写真集にしたいと思ってます。
けっこう真面目にやってるんですよ(笑)ジョーク的な作品の方が珍しいくらいです。下ネタはOmotenashi以降すこしづつ増えていますよ。これからも撮ると思います。
――作品について教えてください。
GABOMI:バナナをお尻にのせている「バナナパンティー」という作品があるんですけど、これ好きです。彼女は友達でお尻や脚がとても綺麗で、バナナのせてみたら面白いんじゃないかなあと思って制作しました。最初は、けつバナナだったんですけどちょっと下品すぎるということで相談の上、このタイトルになりました(笑)バナナが股のところにちょうど入ったんです。奇跡ですねえ。
あとこれは「ワカメ姫」です。豊島の海に遊びに行った時にたまたま撮影したものです。ジョークです。
ワカメ姫
――どうやって撮影してるんですか?(ワカメ姫)
GABOMI:これ、私も海にはいって撮影してるんですよ!ふざけてワカメをちぎって頭にのせて遊んでたんです。つまりウイッグですね。彼女はかなり理解ある友達で時々写真に登場してくれます。いつも怒らないでやってくれるんですよ。やさしい子ですね。
アートが特別なものじゃなくて、とても身近な存在になっている
――GABOMIさんが感じる海外と日本のアート(芸術)における環境の違いってありますか?
GABOMI:文化だから国によって根本的に違うんじゃないんですかね。そんなに詳しくはないですが、ロンドンとパリでも全然違うと感じましたね。パリは伝統や過程など型にこだわっていて意外にカタく保守的だなあと感じました。だからあの町並みが守られているのかなっていう気がしましたね。
特に写真に関しては写真発祥の地である誇りがあるためか、フイルムや製法のこだわりが強いです。一般庶民はあまり美術館には行かないとも聞きました。かなり強いバックボーンがあるか、相当目立つようなパフォーマンスをしない限り、外国人アーティストが活躍するのはなかなか難しいのかなあとも感じました。
ロンドンは伝統的なものだけでなく前衛的なものも混ざった複雑な感じが魅力的だと思いましたよ。何より凄いのが国立の美術館や博物館が無料だということですよね。圧倒的に違うこの美術教育の土台が、ロンドンアートのクオリティを上げているのは間違いとおもいます。また、アートが特別なものじゃなくて、とても身近な存在になっているなあとも。ヘイワードギャラリーは本当に素晴らしく刺激的でした。
あと私も行ってみたいんですけどドイツがベルリンが熱いらしいですね。生活費がベルリンだとすごく安いらしくて、アーティストがたくさん集まって活発化してるらしいんですよ。ロンドンの知人もベルリン移住を検討しているみたいです。
あと、ミャンマーとかタイとか行っておもったんですが、私が行くところは少数民族がいるような地方でして、アートって、ゆとりがある生活を送ってる人じゃないと理解までいかないんですよね。ゆとりがないと日々の生活の糧に追われてて、何の役にも立ちそうにないアートにはまず興味がわかないみたいです。そこでストップです。
――僕も以前フィリピンに数年住んでいたんですけど、その感覚わかります。まだ衣食住が整ってないですからね。当然美術館もほとんどないですし。
GABOMI:少数民族も欧米化が進んでファッションも変わりつつありますが、まだブランドを選ぶとかじゃなくて異性にモテるために飾るという感じがしました。でも、かなりファッションの本質かもしれないですよね(笑)だってオスがメスの気を引く為に飾る。まさにあれじゃないですか。カラフルな羽とかね。原始的な視点で見ると、アートとかファッションって、すごく無意味に感じてしまう時があります。美術館とかギャラリーとかアートのシステム自体が特殊じゃないですか。美術館って教育システムですよね、ギャラリーって美術商業の仕組みで、あとアートプロジェクトとかが色々な組織と複雑に絡み合ってますよね。
発展途上国に行くと文化レベルが低いとかいうけど、確かにある意味では低いのかもしれないですけど、さっき言ったように服も異性にモテる為とか、すごくシンプルなんですよね。難しくないというか。そういうのを見ると、ロンドンとかパリにいってアートの未来を難しく考えるより原点に帰れる気がしてます。
農村で藁ぶきの家に住んでる人たちに写真を見せてもいまいち反応しないんですけど、それでいいのかなとも思うし、たまに「これすごくいいね!」っていう反応をしてくれる事もあって、そういう写真は本質を突けたのかなとか。彼らに響く写真を撮れたときは本当にうれしかったりします。だからミャンマーとかタイで写真展をいつかやりたいなとも。お寺が教育機関でもあるし憩いの場所でもあるので、お寺のどこかで展示できたらステキだなあなんて思ってます。
思考の過程がその時の作品です
――今後やっていきたい事を教えて下さい。
GABOMI:人間というのにすごく興味があって、これは試してるところもあるんですけど。自分が突き詰めたいし、突き詰めている過程をみせてるのが一つ写真展だったりします。人間の核心に迫りたい。人間の人種とか文化とかご当地とかそういう事じゃなくて。そういうのを全部とっぱらった、生き物としての人間というのをとらえたいというのがありますね。
だから、特定の人物を追いかける演出無しのドキュメンタリーはやっていきたいです。(ことでんの写真)
これは全部演出してないんですけど。声がけせずに、人間関係をつくらないように気をつけて8か月通って撮影した写真です。こういう写真も凄く好きだし、さっきの「バナナパンティー」みたいな思いっきり演出して遊んでる作品も好きなんですよね。
私は作風にこだわず、被写体に合わせて自らを変えていくタイプなので、全部違う人が撮ったみたいに見えるみたいです。(笑)今後も、そうやってこだわらずにやっていきたいですし、その時その時しかできない作品を撮っていきたいです、思考の過程がその時の作品ですね。
「だから昔の作品はつくれないんですよ。やれっていわれても、その時の私とは別人だから今は。」
写真家 レイ・ガボミ(REI GABOMI)
1978年生まれ。幼少期を高知県で過ごし香川県へ移住。2008年より独学で写真を開始。
2011年私鉄ことでんの車輌工場を撮影した「ことでん百年目の写真展」(高松天満屋/2011年)が反響を呼び、
一連の写真をメインビジュアルに使用した広告は、2012年全広連鈴木三郎助地域賞優秀賞、
香川広告協会広告賞印刷部門 新聞部門で各優秀賞を受賞した。2012年 写真集「ことでん仏生山工場」を赤々舎より刊行。
高松市立美術館「高松コンテンポラリーアート・アニュアル vol.02」に出展。2013年SICF14 紫牟田伸子賞を受賞。
2013年11月ミャンマーのカレン民族を撮影した写真がH.I.S賞(ミャンマー祭2013 )を受賞。
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