ダンスを通じて社会問題に取り組む団体Do-it
こんにちは!JPです。
以前、MediArtで書いた
障がい者施設に訪問して体験したアートの力
この記事では、アートを通して障がい者を支援する取り組みをしてるNPO団体「灯心会」の取り組みを書かせていただきました。障がいのある人の表現活動の紹介を手助けしする事によって、人が持つ普遍的な表現の力を感じる事ができました。この時は、アート(絵画やオブジェ)が主な表現方法でした。
今回、私は兵庫県加西市に来ています。
なぜここに来たかというと、ダンスシーンにおける障がい者の参画促進を目的にしたマルチアートイベントART FUNKを企画された、NPO団体Do-itの代表Hiroさんにお話しを伺う為です。今回の表現方法は、アート(ダンス)です。私自身、ダンスもアート性が強い表現だと思っています。Do-itのHiroさんにお話しをお伺いしました。
ダンスを通じて社会課題の解決に取り組む
JP(以下――)まずはDo-itの団体についてお話しを聞かせて下さい。どのような団体なのでしょうか?
Hiro:Do-itはダンスを通じてまちづくりを実践するNPOの活動グループです。ダンスサークルはダンスだけやったり、イベントに出演したり、発表会を主催したりしている趣味・嗜好の似通った者が集まる任意の団体と一般的には思われがちですが……
Do-itでは通常は『ダンスやりたい人』や『やってる人』、あるいは『ダンスをかっこいいと思う若年層』が大事だとは思うけど、あんまり普段時間を使ってやらないような、でもだれかがやらなければならない事を普通にチャレンジしてしまう変わったまちづくりサークルです。(ヒップホップカルチャー的にいうとそれがCoolと考えている変わった人たちの集合場所です。)
ダンスイベント以外のNPO活動が特徴的です。ダンスサークルは踊ってなんぼ!!と考えられがちですし、Do-itも昔はイベント中心の活動でしたが、最近ではより生活に密着した活動を主体的に行っています。それは生活に密着する事でいつもみんなの暮らしのそばにダンスが存在する事ができるからです。では生活とはなんでしょうか。Do-itでは生活のキーワードを医療・教育・経済・福祉などを念頭に置いています。そして生活に密着するとは、特にそれらの項目に関しての社会課題を解決する事で達成できると思っています。
ダンスを通じて社会課題の解決に取り組む事で地域にしっかり根をおろした活動ができ、また、それが成功する事で地域社会の福祉へダンスを媒体としたNPO活動が貢献していく事を目指しています。そうする事でダンスがより市民権を得て暮らしに近くなっていきます。これにより各方面でダンサーの地位向上や経済圏の拡張などにも繋がると考えています。
親の死をきっかけに、もっと本質にトライしようと思った
――NPOの活動の中でダンスシーンにおける障がい者の参画促進を目的にした、マルチアートイベントART FUNKを企画されましたが、そのお話しを聞かせてもらえますか?
Hiro:すごく個人な話なんですけど、僕の妹も障がい者なんです。
以前の話ですが、僕の母親が脳腫瘍で亡くなりました。実は借金を返す為に長時間、仕事を掛け持ちして働いていて、母の亡くなった後に貯金がでてきたんです。それが何だったかというと、実は障がい者の妹への貯金だった事を知りました。母親もすごく妹の事を気にしていたんだと思います。
障がい者の親って元気でしょ?それは前を向くしかないからじゃないかというのが僕の分析です。でも実質は生活の不安があって…….先天性の人は凄く過酷なんですよ。彼らが僕らと一番公平になれる為には、経済を動かす主役になればいいのかなと。何か一部でも多面的に見せていけば、障がい者支援の底上げができると思ったんです。
ダンスという自分のスキルを活用して、障がい者とダンスを組み合わせること。ダンスがアート性が強いのはわかっていたので、これを産業化させるためにはどうしようかと考えました。あらゆる障がいを混ぜることによって、もしかしたら偽善と思われるかもしれないんですが、あの子たちのパフォーマンスを見て涙する人がいれば、それはパフォーマンスとして成立するなと思いました。それにお金を出してくれる人もいるだろうと。そこで、障がい者のダンスコンテストをやろうと最初考えたんです。
構想から開催までの流れ
――ART FUNKの開催までのお話しを聞かせて下さい
Hiro:最初の課題は、兵庫県の播磨地域周辺は交通網がありません。田舎なので障がい者の人数も少ない。地域をまたいで、障がい者のダンス表現を浸透させていく為に、どうしようかと思っていました。そこで、僕は無料のダンス教室を開きました。まずダンスをする事ができる、それが一般にもわかるんだよという事を世間にも障がい者の人達にもわかってもらう必要があると思ったんです。
片道30Kmを6ケ所、最初は断られましたが、説得してダンサーの人たちも引き受けてくれました。そして6ケ所の無料教室をやりました。現在は6ケ所で、そのうち民間でやってるのが1ケ所あります。運営も最初の方は大変でした。生徒は、体調が悪いから休みますし、雨が降ったからとか……でもそれが個性なんですけどね。集まりにくいんで時間はかかりました。
そのとき、ふとダンスバトルを思いついたんです。
ダンスバトルについて
――ART FUNKのダンスバトルについてお話を聞かせてもらえますか?
Hiro:実はダンスバトルって、技術だけで評価されるものではないんですよ。いきなり知らない曲がかかって、その一瞬で表現して、それをジャッジが判断するんです。もちろんスキルがあれば、表現のパターンは多いので有利です。でも表現って心や頭で直観で思ったことが大きく左右するので、割と技術があるから勝ちやすいという事でもないんですよ。アート性が強いので、表現というカタチだとダンスバトルはやりやすいんです。ただ障がい者の方は技術力がないので、そこは少しづつダンス教室で身につけていけば、今まで通り教室も成り立つのでダンサーの生業にもなると考えています。
後、大事なのはルール。最初1対1のというのも考えたんですけど、重度障がいの子達は言葉が喋れなかったり、一回座っちゃうと立てない子とかはヘルプがいるので、あえて2対2にしました。一人、誘導役のサポーターとして、障がいのない方をつけるルールにしました。しかし技術指導はしません。例えば、目の見えない子がバトルで戦いに行った時に、終わったよと伝えるサポートを事前に申告しておくんです。そうすることでチームの中に障がい者と健常者がいることによって、何かほんとの助け合いができます。このルールを統一する事ができれば、どんな障がいがある子でもダンスバトルに出れると思うんですよ。
新しく作って壊す
Hiro:後日談ですが、参加者の親が喜んでいたんです。今まで子供に競争なんてさせられた事なかったから、新しい体験をさせてあげられたって。僕は競争は必要だと思うんです。なんで競争が必要かというと、常に障がい者の方は標準で水平じゃないですか。だから健常者と水平となる為、バリアフリーにしましょうという考えから今までサポートしか受けてこなかったんです。そもそも競争は大事なんですが、他人を蹴落とす競争ではなくて自分自身を超えていく競争はありですよね。スポーツなんかそうだと思うんですけど、自分自身を超えたかどうかを確認する為に客観的に他人がいる位置づけが理想だと思うんです。最初は、どこかで負けたことを卑下するのを、危惧していたんですが、実際にやってみると大丈夫でした。
――ジャッジの方の反応はどうでした?
Hiro:みんな興奮してました。僕らダンサーの世界でもジャッジの時はやはり技術や、前に有名な大会にでていたからというのでどうしても優劣をつけがちなんです。しかし今回は生の表現だけをジャッジしていく。純粋にジャッジできたので、審査側もみんな興奮していました。
自分自身を超えていく競争
――今後のART FUNKは?
Hiro:産業化していかないとダメなので、スポンサーをつけてこれ自体のイベントがもっと大きくしていきたい。
地域ごとに予選をして、僕としたら障がい者のダンススクールもたくさんできて、最終的にはART FUNKのダンスバトルは、出演者は障がい者、健常者も一緒。全国展開で予選して、障がい者の優勝者を決めて、並列で一般の人のダンスバトルもやって優勝者を決めて最後は勝ったのもどうしを対決させる。その後ある程度、表現が均衡してきたと世の中に認められた瞬間に
全部なくしてしまって。そうすると一般のダンスバトルにも誰でも参加できるようになると思うんですよ。
新しく作って壊す、そこがゴールです。
最後に
みなさんいかがでしたでしょうか?ダンスもアート性が非常に強いと感じていただいたと思います。現在Do-itの活動はHiroさんを中心に全国に活動の輪を広げていってるようです。情報はDo-itのFacebookページで随時更新されています。興味あれば是非足を運んでみてはいかがでしょうか?
*ここでのNPOとは法人格(狭義)とこではなく活動(広義)の事を意味します。
Do-it(Hiro)
兵庫県加西市を中心としたダンスや表現で地域活性を実践するNPO団体の代表。
Do-it Facebookページ
ART FUNKホームページ
記事をまとめた人:JP(MediArt管理人)
Twitter ID:@pandawawapopo